夢のない絵

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シュタインズゲート総評

アニメシュタゲの全体的な感想と思ったことを書き連ねました。
お暇でしたらご覧ください。

エル・プサイ・コングルゥ



ゲームが有名になった2009年頃から気になってはいたんだが、体験版動画とかはちょっとだけ見たけど、
結局買う気は起きないままアニメ視聴終了してしまった。
ガッツリタイムトラベルものだと知っていたら買っていたんだろうか。
まぁノベルゲに馴染みがなかったのもあるかな。
とにかく近年稀に見る複雑な傑作でした。それだけ考察し甲斐があったというものです。
1話を見た時は何のワクワク感もなく引きも弱く、ちょっと訳分からなかった。
紅莉栖の殺害現場も岡部の見間違いだと思ったし、まだタイムトラベルものだとも思ってなかったと思う。
数話経ったらむしろ、岡部やダルのオタオタしい会話に辟易して
今から全話見るのちょっと苦痛だなーとか思ってた気がする。

・静かに忍び寄る恐怖描写
1クール目はDメール実験を中心にラボメンの日常を描く。Dメールの発見だけで十分SFだが、
後半の非現実的な状況に一歩踏み入れてしまった状態と比べるとまだ現実から半歩踏み出したような状態。
タイムリープマシンが完成してもなおその記念パーティを開いてしまうなど、あくまで日常の延長上を行く。
前半が冗長に感じたのは情報の少なさにあると思った。
後半に入り鈴羽から未来世界の説明があるまで、物語の核心に迫る問題の説明はなされない。
だがSERNの影が迫るごとに不安煽る描写が、確実に得体の知れない怖さにつながってくる。
実験を重ねるごとに恐怖が忍び寄る過程がむしろ心地良く、次回が楽しみだが見るのが怖い。
そのような見間違いや悪戯と判断してしまう程度の間接的で段階的な恐怖描写が和ホラーっぽく、
マジの機関に狙われてるっぽくてヤバイ状況なのに怖いもの見たさでのめり込んで
死亡フラグ立てまくっていく状況が洋ホラーのようで、SF映画のようなワクワク感は薄い。
実際にはゼリーマンズレポートや生首付きの脅迫メール、
SERNとラボのPCが直接回線で繋がる事態にまで陥る。
ここまでついて来れる人はこのどれも死亡フラグだと読み取ることができただろう。
その一方、タイターとメールのやりとりをすることで未来世界と繋がる可能性が、
SF的ワクワクの要素が残されることになる。
だが、このような脅しを受けようがタイターに見初められようが、主人公は、
勇ましく敵に対抗するとも未来人との遭遇に胸躍らせることもせず、どちらにも身をたじろがせる。
それは、主人公は厨二病発言の耐やさない非現実を夢見ている青年に見えるけれども、
実際は単なる凡庸な一般人であることを示している。同時に物語の方向性も示されている。
精神的に強くない普通の人間が現実世界でSFと対峙した時、それは畏怖の対象となる。
そういう点でリアルだと思ったし、Dメール実験を始めた中盤は楽しんで見れた。
そして不穏な空気がピークに達しまゆりの死が恐怖の正体を明かしてくれる。

・半現実から非現実へ
12話、唐突にまゆりは殺され、彼女を助けるために岡部は時間をループし始める。
ここでようやくシュタゲの全体像を理解する、これはまゆりを助けるために時間移動を駆使する物語だ。
それと同時に岡部はようやく非日常の文脈で戦い始める。恐怖の正体は抗い難い運命だった。
岡部が感じた得体の知れないものへの恐怖はまゆりを救えない運命への苦悩に変わる。
以前からどこか怪しいと思っていたあの鈴羽の存在が急速に重要度を増してくる。
世界線設定、アトラクタフィールドの収束、ダイバージェンス1%の向こう側…。
SFに慣れていても初めは困惑した設定、時間軸の解釈。
多分、シュタゲの話の辻褄を合わせようとした結果このような複雑かつ曖昧な解釈に辿り着いたんだろう。
現実にタイターが提唱した世界観を踏襲しているので説得力がないわけではない。
しかもそれを作品内でタイターを名乗る人物に説明させているのだからメタな状況だ。
最後まで見て、ほぼ全て因果律に従って組み立てられた事象の中で唯一
「SERN介入以外のまゆり死亡原因の解釈」だけは寿命の一言で片付けられてしまっていて腑に落ちない。
運命という言葉が度々使われるが、それが胡散臭くないのは納得のいく理屈の範囲内の出来事だからだ。
Dメールを傍受されたためSERNに狙われ、関係者のまゆりが消されるのは因果だが、
ラウンダーの手は下されないが同じ時刻に事故で死ぬのは偶然だ。これを運命で説明するとどうなるか。
解釈としては恐らく、ダイバージェンス1%の変化には大事件や人の死などが影響しているため、
紅莉栖が生き残ったα世界線では代わりにまゆりが死ぬ運命にある、ということになるのか。
このアトラクタフィールドのシステムによって、シュタゲは複雑な話を組む上で
矛盾の心配をしなくてよくなったと言えるのかもしれない。
話を元に戻すと、がむしゃらにやっても結局まゆりは救えなかったが、
タイムリープの上限を知ることで時間を有効に活用し始める。
鈴羽を送り出すがIBN5100入手に失敗、岡部は鈴羽を救うためにDメールを打ち消すDメールを送る。
すると、まゆりの寿命が一日延びる。今まではDメールを送るごとにだんだんとSERNが近づいてきたのに
同じDメールでも送り方次第でまゆりの死から遠ざかることもあるという事実が分かる。
Dメールで変えた世界線はDメールでしか変わらないという一貫した構成に脱帽だ。
ラボメンにDメールを送らせた順とは逆の順番でDメールを打ち消していく、
まるでマラソンコースの折り返し地点を通って同じ風景を逆の順番で見ていくような感じ。
そして世界線が変わるごとに変遷するIBN5100の行方が物語の鍵。
アニメでははっきりと描かれないところもあるが、
右の矢印の先はDメールを送った結果です。

鈴羽が1975年にタイムトラベルして入手→タイムマシンが雷雨で故障、記憶喪失になり入手失敗
 ↓
フェイリスの父親が橋田鈴から譲り受けるが
故人になったため柳林神社に奉納→父親が生存した10年の間で手放す
 ↓
2010年まで無事奉納され続ける→女のるかは力が弱いため、蔵の掃除中に落として壊す
 ↓
岡部と紅莉栖がラボに持ち込む→IBNの在り処を知った萌郁が神社から事前に盗み出す、ラボからなくなる

IBNを誰が奉納したとか鈴羽とフェイリスパパの関係性とか細かいところは分からないけど
間違いはないと思う。この見えないところでの変遷に本当に感心してしまった。
本編ではDメールを打ち消し始めると今まで以上に孤独になっていく。
Dメール改変で共有していた記憶の改変に加えて、まゆりの宿命という問題がのしかかったからだ。
そこで天才過ぎた紅莉栖の存在が重要な理解者として活きてくる。
岡部が孤独の観測者になると、紅莉栖が本当の意味で助手になって観測の手助けをし始める。
22話の紅莉栖に関する熱は以前にお伝えしたので省く。
紅莉栖は最初からツンデレだったが、岡部の好意が唐突だったようにも見えるが、
その唐突さが真摯さとも受け取れる。
最終的に紅莉栖は蘇ったが、まゆりを想って死を覚悟した紅莉栖はもういないのが寂しい。
これは鈴羽にも言えること、7年後に生まれる鈴羽は戦争やタイムトラベルを経験したあの鈴羽ではない。
全ては岡部の記憶の中にのみ生きているのだ。だから結末を知るより中盤を追う方が楽しい。

・導入と発明
ゲーム版ではタイムトラベル理論で現在提唱されている11の理論が登場し、
実際に紅莉栖が説明するシーンもある。現実世界からの導入はフィクションにリアリティを与える。
ジョン・タイターは2000年にアメリカの掲示板に現れた実際起こった現象。
世界線の理論は実際のタイターが提唱した理論。量子力学の多世界解釈の理論の可能性を示唆している。
例えば、世界線理論上では親殺しのパラドックスは起きない。
過去に飛んだ時点で違う世界線に移るのでその親を殺しても自分が生まれない世界線ができるだけだからだ。
提言の中には既に%表記の世界線のズレの言説も見られる。
この%は世界線を移ったり、過去世界に干渉することで少しずつズレる。
世界線をズレることで別の世界線で起こったことが起こらなかったり、微妙な差異が出てくる。
先にも書いたが、このようにシュタゲの世界線解釈は現実のタイターが提言したものに
よりシステマチックな設定を加えて踏襲したものだった。
タイターの予言の中にCERNのタイムトラベル研究を始めることも含まれている。
さらに現実タイターもIBM5100入手を目的に過去に来ていた。
ちなみに「C204」も現実のタイターが使用したタイムマシンの名称から取られている。
ここまで見ると、タイターの存在や言説の多くが元ネタとして
シュタゲ設定の根幹、中枢にまで深く根ざしている様がわかる。
そもそもSFは現実世界を土台にifの方向に話を広げるジャンルのものだから自然な成り行きと言える。
この作用がシュタゲにはかなり多く占める。つまり現実世界にごく近しい世界でSFを語っている。
そのSF的ガジェットも現実からの引用、導入に終始する。
そこに視聴者はより強く現実感を感じる結果となった。
さらに「タイターが現れなくてもシュタインズゲートは生まれたか」と考えるとどうだろう。
他にも現実とリンクする事象は多くある。
1990年代後半から秋葉原がオタク文化の中心地になり、
2008年9月にCERNが素粒子加速器LHCでブラックホール生成実験を開始した。
そして岡部の厨二病キャラの元ネタとなった「食堂の男」の書き込みは2005年。
これらの元ネタはそれが現れなかったとしても別の似た流行・出来事が現れ、採用されたかもしれないが、
今のシュタゲとは別のものになっていただろうことは明白だ。とはいえタイター出現はそうはいかない。
明らかに、タイターが現れない世界線ではシュタゲは作られなかったのでは?というレベルだ。
世界線の理屈がシュタゲという作品の存在自体にも当てはめることが出来て、いかにもなメタ構造で楽しい。
こういった拡張現実的である点が自分の最大の評価点です。
つまり現実に身近にある事象をタイムトラベルの小道具にすげ替えることで
より強く想像力に結びつけることができる。

・もしも過去にメールが送れたら
・ジョンタイターが実在したら
・世界線理論が正しかったら
・CERNがカーブラックホール理論でタイムマシンを発明したら
・秋葉原が萌えじゃなくなったら
・厨二病が世界を救ったら

岡部はまさに厨二病であり続けることで世界を救った。これはドラマCDを聴いてより確信しました。


昨今読者不足の出版不況、SF作家という肩書きは日本から消滅し、
純粋なSF文学は衰退したと云われている。
また21世紀を迎えた現代社会は未だに車は空を飛ばないし、木星にも着けておらず、
タイムトラベルも出来ない。SF的ガジェットの完成率の低さにSFに夢が持てなくなっていると思われている。
そうではなく現実が近くなりすぎてSFを現実的に見切りをつけすぎているのだ。
エンタメの世界でもこれからはシュタゲのように生活圏内のSF、
よりリアルに即した状態で拡張現実的に捉える形が流行すると思う。
これは大人向けのアニメなどのオタクコンテンツが増え、
かじり易い近さにまで親しみやすくなった現象と対応していると思う。
僕としてもロボットアニメ以外のSFが増えてくれた方が嬉しいのでシュタゲを全面的に支持していきます。

感想に終始してしまったので、残された考察や書きたいことは追々やります。
コメントで紹介してもらったドラマCDβ聴いたのでその感想も書きたいし。
時間があったらタイムトラベルものの映画を取り上げて特徴を比較したりとかしたかったんですが、
すぐには無理かなー…。
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by uri-yousuke | 2011-10-06 10:44 | アニメ

洋画、アニメ、ラジオが好きな男児


by uri-yousuke
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